住職のショートショート:エピソード45「高名な先生が近くに引越してきました」

高名な先生が近くに引越してきました

以前、他府県にお住まいの高名な先生に、講義をしていただいたことがありました。
その高名な先生は、その後ご縁があって大阪に引っ越してこられ、大阪のお寺の住職に就任されました。
その講義を一緒に学んでいた私の友人(住職)は言いました。
「高名な先生が大阪に来ていただいて、これは大阪の宝物ですね」と。

その先生が入られたお寺は、その友人のお寺から車で1時間はかかる場所にありました。
私は「そうは言うけれど、もしその先生が歩いて5分くらいのすぐ近くのお寺の住職になったら、それでも宝物って言える?」と尋ねました。

その友人は、「うーん、それは困り物…」と答えました。
もし高名な先生が自分のお寺の近くに引越してこられたら、今度は先生と自分が比べられてしまう。
そんなことになれば、誰も自分のお寺に来なくなるかもしれない…。
私は、そんな正直な気持ちを言ってくれるその友人が大好きです。

同じ高名な先生でも、遠くに感じるところなら宝物になり、
すぐ近くだと感じるところに来られたら、『困り物』と感じてしまう。

本当に人間って、わがままで勝手な生き物だと教えられた!
私はと言えば、近くに来られても『宝物』だと
痩せ我慢するところがあります。

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