住職のショートショート:エピソード44「ネズミと撃退音波」

ネズミと撃退音波

最近はお寺の近くに10数階建てのビルがどんどん増えてきています。
私の小さい時は、2階建てでさえなかったのに。
1階が車のスペースになって、3階建てが増えてきたと思っていたら、
一気に10階を越える建物が増えてきました。

当然、古い建物が壊されて行きます。
多分その為にすんていた沢山のネズミがうちに引っ越して来ました。
お腹が空いていると何でもかじります。
お経の本まで食べるようになりました。

そこでホームセンターでネズミ撃退超音波発生機なるものを購入しました。
私にはその音は聞こえないのですが、ネズミには不快な音のようでした。
絶対に食べものを置かないようにしていると、だんだんとネズミがいなくなりました。
そのうちにその器具は置いていたことを忘れてしまっていました。
ある日小学生が数人遊びに来て、
「おっちゃん、この音なんとかなれへんの!」と言われました。
そのネズミ撃退超音波は、子供達には耐えられないノイズだったのです。

お寿司を食べる時、最近ではワサビを自分でつけるお店も増えてきましたが、
以前は「ワサビはどうします?」聞かれていました。
小学生くらいだと「ワサビ抜きでお願いします。」と答えます。
そんな時、「ワサビがだめなのは、まだまだ子供やな…」
と、上からの目線で見ていたものでした。
でもそれは、もしかすると大人のほうが聴力や食べ物を味わう能力が
劣ってきただけかもしれない、と最近思うようになりました。

歳を重ねて、いろいろな風景に出会っていきます。

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