記憶
人の寿命が延びて高齢者多くなり、今までにない新たな問題が生まれてきてます。
老々介護、ヤングケアラー(20歳前後の方が高齢者を介護する)など、
介護疲れから事件のニュースを聞くことがあります。
檀家さまのある方が、
「兄弟姉妹で親の介護をしてますが、認知症の親は他の兄弟の名前はみんな忘れてしまいましたが、私の名前だけは覚えてくれてる。」となんだか嬉しそうに私に話されました。
ところが数ヶ月して、「娘の私の名前も忘れられました…」と、
とても情け無いような、怒りとも取れるような言葉を私に投げかけられました。
私の母は、認知症と診断されました。
母の言葉や振る舞いが、周りから受け入れられなくなりました。
そうすると母は、興奮して大きな声を出して叫び、身近にあるものを投げ出しました。
私は、母がおかしなことを言っても、母の言葉に傾聴して、否定せずに全部受容していくことにしました。
母はだんだんと穏やかになって行きました。
ある日の夕方、母は、「これから実家に帰ります」と出て行きました。
「じゃあ一緒にいきましょう」と私は背後からついていきました。
ゆっくりした足取りで、しばらく歩くと、どちらに向けて歩いてよいのかわからない様子です。
私は、「今日はもう日が暮れてきたから、また明日にしてはどう?」と声をかけてみました。
母は、「お前は誰?」と、私のことがわからないようでした。
それでも危害を加えるものではないと判断したようで、私に従って家に帰って来ました。
私は名前を忘れられたのですが、これが認知症なんだと、素直に受容れることが出来ました。