住職のショートショート:エピソード35「親の愛 通ってはいけないこの道」

親の愛
通ってはいけないこの道

ある日、友人を助手席に乗せて運転していると、
「この道、通っても良いの?」といきなり質問されました。

私にとっては、仕事でよく通っている道で、そんなことは考えたことも有りません。
しかし、その友人は、親から「この道は通ってはいけない!」
と厳しく忠告されていたそうです。

私は、そのように言うのは、この地域に住んでいる方々に対して、
とても差別的な考えだと思いました。
もし私も小さい頃に親からそのように言われると、
ずっと体に染み込んで、避けるようになったり、
よく思わなくなってしまったことと思います。
親は子供のためと思って愛をこめて忠告しました。

私はただびっくりして、その友人には何も言えませんでした。
何も言えなかったことは、
私も「差別に加担している」と言われてしまうかもしれません。
自分の申し訳ない気持ちが起こりましたが、
友人にどのように言って良いかわからず、しばらく沈黙しました。
そのままスルーしました。
私は一瞬の間に、いろいろ考え、無難だと思える行為をしてしまいました。

私もいつもその道を通るたびに、
今でもその会話を思い出しています。

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