住職のショートショート:エピソード18「実の成る木は罪を作る」

実の成る木は罪を作る

私が小学生の頃のある日、
父は「実の成る木は罪を作る」と切ってしまいました。
私のお寺には、実の成る木が有りました。イチョウ、イチヂク、ナツメでした。
イチョウは匂いがきつく、食べれるようにするまでの作業は大変です。

私は庭のイチヂクの実を毎日見ていて、
そろそろ熟して明日には食べようと心待ちにしていました。
ところが次の日にみると、その実は取られてしまっていました。
私はガッカリしたのを覚えています。
父が木を切ったのはその事がきっかけになったと、ずっと思っていました。
大人になって、ふとその出来事を思い出したのです。もしかして他の理由があったのでは…。


ある日わたしは、お寺の近くの路地にいました。
父が自転車で帰って来るのが見えて、私は隠れました。
いたずら心だったのか、
見つけられて用事を言い付けられるのが嫌だったのか、記憶は曖昧です。
当時は父は、私を見つけると、
「ちょうどよかった、これをどこどこに届けてくれ!」
などと毎日のように、私に使い走りをさせていました。

とにかく、私は隠れたつもりだったのですが、見つけられていました。
「何故、親を見て隠れるのか!」と、怒り心頭です。
私は引きずり出されて、イチョウの木に縛られました。
お昼過ぎから、だんだんと、薄暗くなって来ました。
私は泣き叫んでいました。
とうとう涙も枯れてしまいました。
母が「そろそろ解いてやったら?」と言ってくれて、
私は解放されました。

その数時間、私はとても悔しくて仕方なかったのです。

その出来事は、自分でも気付かないまま、私の深いところに刻まれて、
私が自由を束縛される事が、とても嫌いな性格になっていったような気がします。
もしかして、父はその出来事が自分の罪と受け取り、
イチョウの木を切ったのかなあと、今回のエピソードを書くにあたって思いました。

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